彼女の名前とかつけた方がいいかな?いつまでも三人称じゃわかりにくいきが・・・
彼女は傘も持たずにに校門のまえに立っていた。
「なにしてんだ?」
「あー、うん。傘忘れちゃって……。誰か通るの待ってたんだけど」
「悪いな、俺も傘持ってないんだ」
「……みたいだね」
そこで彼女は迷ったような素振りを見せ、
「あのさ、一緒に帰らない?」
「お前、話の内容が論理的崩壊起こしているぞ。どうなったらいきなりそう飛ぶんだ」
「いや、ほら。どうせ二人共濡れるならさ、一緒に帰った方が良くない?」
正直意味がわからない。わからなかったが、俺は頷いていた。内心の喜びを努めて隠しつつ。
「わかった」
「ホント! やったー!」
雨の中ハシャがれた。
飛沫が飛ぶのでやめてもらいたい。
「じゃあ、いこっ!」
雨のなかで晴れのような笑みを浮かべる彼女。
その笑顔を見て、心が動悸を激しくした。
俺はやっぱり彼女が好きなんだと再認識し。同時に暗い風が心に吹いた。
雨のなかを彼女と帰る。
彼女と歩く帰り道は久しぶりだった。
「フンフフンフ~ン♪」
「ガキかお前は」
彼女は上機嫌に鼻歌なんぞを歌っていた。
「ガキじゃないし、ヤスよりお姉さんだし」
「一ヶ月だけな」
九月生まれと十月生まれの差だった。そして今は九月の最後の日。
彼女が十五で俺は十四、数字上は確かに彼女の方が年上のよう。
「一ヶ月でも年上は年上だし。敬いなさい」
エッヘンとない胸を逸らす。俺よりもかなり低い背と相まって年上の威厳は微塵もなかった。
「ハイハイ、年上年上」
なので口では敬いつつ頭を撫でた。
「全然敬ってないし……」
と言いつつも彼女は手を払わない。
濡れた手で濡れた髪をしばらく撫でる。
とても、恥ずかしかった。
ので、グシャグシャと強めに乱暴な撫でに切り替える。
「うわ! なにすんだよー! やめろー!」
「ハッハッハ」
「笑うなー!」
楽しかった。
久しぶりに。とても。
だからこそ俺の中の不安は大きくなっていったんだ。
そんな風に遊んで、家に帰る。
当然母親には文句を言われたが、ぶっちゃけどうでも良かった。
なので、適当に受け流して部屋に戻った。
部屋に入ると急にそれまでの事を思い出す。
「ハァ……」
ため息をついてしまう。
彼女と話せたことは、嬉しかった。
彼女が俺と話していて嬉しそうにして。それがどうしようもなく切なかった。
久しぶりに話せて、笑えて、嬉しくて。
だからこそそれが俺の一方的なものだと思うと、更に苦しくなった。
「アホくさ……」
一人で悩んでいても馬鹿らしい、と思った。
考えるだけ無駄だ、と。
「メール、してみるか」
メールなんて家族以外でするのは初めてだった。
何を書けばいいのかわからない。
わからないので、俺は今にあるパソコンから2ちゃんねるにアクセスした。
安価でメールしようと思ったからだ。
結果は、失敗だった。
というよりも俺には無茶な安価を実行するだけの度胸がなかった。
というわけで、題名に自分の名前だけ書いて、中身白紙で送信。
帰ってきたメールには「コワッ」と書いてあった。
それから拙いメールのやりとり。
俺は書くのが遅く(今でもそうだが)、一つの返信にだいぶ時間を書けていたが、
それでもメールが途切れることはなかった。
話の内容は、これまでのこと。
一緒に通った小学校の頃や、中学校に入ってからのお互いの話。
その中で、俺は彼女が小学校の頃いじめられていたことを聞いた。
が、そのことにはあえて触れなかった。
今日のことも話した。
帰ってきてからずっとしていて、気がつくと百件を超えるメールしていた。
『そろそろ寝なきゃ』
彼女からのメール。
俺はそれにどう返信しようか迷って。
『おやすみ』
それだけを返した。
自分のヘタレっぷりに絶望。
スマン。書くのが遅くて。しかも俺自身はテンションが上がって眠れないという罠ww
それからは、小学校の頃のように遊んだ。
たまに一緒に帰ったり、廊下で会うと休み時間が終わるまで話し合ったり。
メールも一度はじめると尽きることはなく。母親に携帯代もバカにならない、と怒られた。
ついでに誰とメールしているのか詮索されたが、「友達だよ」と言って誤魔化しておいた。
彼女の名前がアドレスに入っていたのでバレバレだったと思うが。
ちなみに、俺の母親は彼女の事を知っていた。むしろ仲良し。
母親は「あの子、絶対にあんたのことが好きだよ」とよく言っていたが、
その度「そんなことねーよ」と返していた。
何でテンション上がってんの
>>58 同窓会後だから。
テスト休みが近づいたある日。
「ヤス!」
「ん?」
廊下を歩いていると彼女に呼び止められた。
「なんか用?」
「今日、暇?」
その日は部活も塾もない。いわゆる暇だった。
ただそれを素直に言うのは何となく癪だった。
「時間的余裕を持て余していることが暇だというのなら暇といえなくもない」
「つまり、暇なんでしょ」
「……はい」
あっさりと流されてしまう。
「私はね、今日塾があるの!」
少し語気を荒げて彼女は言う。
「はあ」
「でもね、わからない問題がある!」
「んな堂々とバカ宣言しないでも……」
何が何だかわからない。
俺は彼女が自虐癖に目覚めたのか心配になった。
「だから、」
「今日、ヤスの家に行ってもいい!?」
時が止まった。
「はあ?」
言っている意味がわからなかった。
「何言ってんのお前」
「だから、家に行ってもいいかって訊いてんの!」
「それは別に構わないけど……」
構わなくないだろ俺。
「よし! じゃあ、放課後すぐに行くね!」
そういって彼女は去っていく。
取り残されたのは、未だに理解が追いつかない俺。
とりあえず、
「部屋の掃除しないとな」
放課後は全力ダッシュが決まった。
「あんたなにやってんの?」
珍しくウチにいた母親が訝しむのを気にせず、
俺は自分の部屋のゴミを弟の部屋に投げ入れる。
全て運び出した頃、
ピンポ~ン
チャイムがなった。
慌てて電話をとる。
「は、はい!」
「あ、兄? 鍵忘れたから開けてほしいんだけど」
「紛らわしいんだよ! ボケ!」
俺はチェーンロックをかけた。
再びなるチャイム。
「うっせえ!」
「なにやってんの兄! 意味がわかんねえ!」
「黙れ愚民が! お前はサッサと家に帰ってママのミルクでも吸ってやがれ」
「いや、ここが家なんですけど! あと兄にお客さん? が来てるけど」
俺は凍りついた。
「マジで?」
「マジで」
「ど、どうも~」
電話口から聞こえた声は確かに彼女のものだった。
「アハハハハハ、ば、ばっかみたい!」
うるせえバカこの女。
心の中で毒づく。
醜態を晒した俺は恥ずかしさのあまり自害したくなりながら彼女を部屋に招き入れた。
ちなみに弟へはささやかな復讐として家中のゴミをベットの上に載っけてやった。
生ゴミ回収の日だったので命拾いしたな。
「で、どこがわかんないんだよ」
いつまでも笑っている彼女を止めるべく、本題に入る。
彼女は塾に行くといった通りカバンを背負っていた。
「あはは、はー。おもしろ。でーうん、何だっけ?」
「問題。わからないところがあるんだろ」
自慢じゃないが俺は頭だけは良かった。
彼女と天地ほどの差。誇張ではなく事実。
「あーうーんー? まあ、そんなことは置いておいてさ」
置いておくなよ。
言うと彼女はトコトコ歩き回る。
「ここがヤスの部屋かー」
「なんか、想像通りだね」
漫画だらけの部屋を見てそう呟く。
「人の部屋を勝手に想像するんじゃねえ」
「別にいいじゃん。減るもんじゃないし」
彼女は本棚から漫画を抜き取ってベッドの縁に座る。
そしてそのまま読み耽った。テニプリを。
「オイ、勉強はいいのかよ」
「んー? んー」
気のない返事。
仕方ないので俺は自分の机から椅子を引っ張り出してそこに座った。
で、することもないのでボーッとしていた。
「ねえ」
しばらくそうしていると声をかけられる。
「ん?」
「ヤスは普段なにしているの?」
「漫画読んでる」
「どんな漫画?」
「ここにあるやつ」
満杯になっている本棚を指差す。
「ふーん」
「……」
「……」
何が言いたいのかわかんねえ。
が、何となく俺の方から話題を振らなきゃいけない気がした。
「お前は、なにしてんだよ」
「私?」
そこで彼女は漫画から目を離してこちらを見た。
「私は、漫画読んだりCD聞いたりしてるよ」
俺の部屋にはCDが一枚もなかったので、音楽はわからなかった。
なのでわかる方を聞く。
「どんな漫画?」
「少女漫画とか」
「プッ」
思わず吹き出してしまう。
「なんで笑うさ」
「いや、だって」
イメージが合わない。
「だってお前、少女漫画ってあのやたら目がキラキラしたやつだろ? 似合わねえ」
「ヤスは私のことを何だと思っているよ?」
「アッハハハハ!」
「笑うなー!」
さっきの仕返しだった。
「そ、それに、最近の少女漫画はすごいんだから!」
「は? 何が」
思わず聞き返してしまう。
どうせ大したものではないだろう、という気持ちから。
「最近のは、その……しちゃうんだから」
「はい?」
語尾が弱くて聞き取れなかった。
というより、頭が理解を拒んだのだろうか。
「最近のは、しちゃうんだから」
今度のはハッキリと聞こえた。
「えと、それって? その、生殖行為?」
恐る恐る訊いてみる。
「…………」
無言の肯定。
同時に気まずい空気が部屋を支配する。
何てことを聞いているんだと公開した。
なので、務めて明るく返す。
「そ、そうか! 最近の少女漫画ってすげえな!」
「うん……」
そしてまた気まずく。
どうしようどうしよう。
俺はこれまでにないくらい動揺。なにか打開策は。
と、そこで時計に目が行く。
「あ、その、じ、時間!」
「え?」
「いや、ほら、塾!」
「あ、あー!」
気がつくと随分な時間になっていた。
彼女が塾に行く時間だ。
「やばいやばい! 急がなきゃ」
慌てて支度する彼女。先ほどまでの空気は霧散していた。
「送ろうか?」
送る、といってもすぐそこまでだ。
彼女の塾はうちのすぐそばにあった。
「あー、ううん。だいじょぶ」
「そっか」
それだけのやりとりをして彼女は慌てて出ていってしまう。
それからしばらく呆然とする俺。
やがて、気づく。
「俺、めちゃくちゃヘタレじゃね?」
答えてくれる人はいなかった。
「ヘタレ野郎」
と思ったら母親がいた。
俺がヘタレだということはわかってもらえたと思う。
実際、あの頃は気づかなかったけど今思うとホントにフラグブレイカーだな。
と、まあそんな風にフラグをバキバキ折っていた俺だが、ついにチャンスが巡ってきた。
それは中3の春頃、六月の話だった。
うちの学校は六月に体育祭をやるところだった。
当然、俺は参加するつもりは対してなかったが。
なぜか、再び委員になる俺。おまけにクラスの女子とペア。
面倒くささを全身でアピッていたのだが、
その子は身体が弱いらしく手伝えという勅命が下された。
なら委員なんかやるなよ。と思いつつも仕事をこなしていた。
そして、なぜだか知らないが。ホントに知らんが。
俺がそのこと付き合っているという噂が流れていた。
その子の名前を青木とする。
青木は実際に可愛い娘だった。
だが俺の食指は全く反応しない。
というのも、俺の友人が彼女の事を好きだったから。
友人の好きな人を好きになることを俺はできなかった。
ちなみに彼女の事を好きだといったやつは俺のなかで友人じゃなくなっていた。
とまあ、こんなわけで根も葉もない噂だと放置していた。
が、事件?が起きてしまった。
青木が転校することになったらしい。
正直どうでも良かったので聞き流していたが、なんでも療養のために田舎へいくそうな。
友人涙目、と思っていたらクラスの視線はなぜか俺に。
その目は獲物のねずみを見つけた猫の目を彷彿とさせた。
「ヤス~、青木がいなくなっちゃうぜ~!」
「いいのかあ、恋人がいなくなっちゃうよ!」
クラスの嘲笑。彼らはからかいかもしれないけど、俺は嘲笑と取った。
友人が、俺を見ていた。
「静かに!」
教師の一言で教室は静まる。
その場は解散となり、次の体育祭リハーサルへと移った。
リハーサル直後、教師は今度は学年全員がいる前で青木の話をする。彼女も同じ学年だ。
彼女が最後の思いでのために体育祭の委員になったことをここで知ったがどうでもいいことだった。
それよりも俺は、ニヤついてこちらを見るクラスメイトが気になっていた。
「ーーなので、皆さん青木さんにお別れを言っておくように」
教師の声がそんなことを告げる。
その機を見計らったように一人のクラスメイトが声をあげた。
「センセー、ヤスくんが青木さんに言いたいことがあるようでーす」
「なっ!」
何を言っているんだこいつは?
そう思った俺を瞬時に数多の視線が取り囲む。
当然その中には彼女も。
「ヤス~、言っちゃえよ~。俺はお前と分かれたくないんだ~、って」
「ーーッ!」
瞬間、俺は激昂した。
そいつは、友人の事も青木の事も、俺の事も考えずにそんな発言をしたからだ。
気づくと立ち上がって、そいつに殴りかかった。
「テメェ! ざけんなっ!」
突然殴りつけた俺を、慌てて教師が止める。
殴られたやつは呆然としていたが、すぐに立ち直り、こちらへ向かってくる。
「何だよ! ホントの事だろ!」
もう一発殴りかかろうとするも、教師に羽交い絞めにされたせいで体が動かない。
「こら! やめなさい!
他のみんなは教室へ戻ってなさい!」
教師の声にそれまで固まっていたやつらが動き出す。
彼女が心配そうに、俺を見ていた。
それから、教師にコッテリと絞られた俺はイラつきながら家へと戻った。
親には遅かった理由を適当にはぐらかしておいた。
今日はもう何もする気が起きない。
そう思いベットに寝転ぶと、携帯がメールを受信していた。
相手は彼女だった。
『今日はどうしたの? 何かすごかったけど? だいじょぶ?』
俺を心配する文面。
少し気持ちが軽くなった俺は、それに軽口で返した。
『大丈夫、な。お前は日本語もまともに使えないのか』
我ながら素直じゃないな、と思った。
『うっせー! 何があったの?』
彼女は尋ねてきた。
話そうかどうか迷う。
わずかな逡巡の後、俺は今日のことを伝えることにした。
『ほうほうなるほど。そりゃ失礼な話だね』
一通り話すと彼女はそう返事をくれた。
『まったくだ。俺がなんで青木のことを好きにならなきゃいかんのだ』
俺が好きなのはお前なのに、なんて書けなかった。
『好きじゃなかったの?』
『当たり前だろ』
『そっか。じゃあ、誰が好き』
「ハァ!?」
俺はその文面に目を疑った。
これは、答えなきゃならんのか?
いや、わ罠かもしれない。
悩んだ末に俺はヘタれた。
『お前こそ好きなやついるんだろ』
『なんで知っているの!?』
知っていた。
だから、知りたくなかった。
『じゃあさ、私も教えるからヤスも教えてよ。いいでしょ?』
絶対に嫌だと思った。
傷つくと思っていたから。
だけど、心のどこかで、希望が光っていた。
絶望を確認しよう。
俺は、意を決してボタンを押した。
『俺が、好きなのは……お前』
悪い、ちょっと風呂入ってくる。
ここからは酔いを覚まして書きたい。
おまww良いとこなのにww
指が震えた。
心臓も、ありえないくらい高鳴っている。
手に汗握る、というか手はふやけてしまうんじゃないかというくらい汗ばんでいる。
まず最初に過ったのは、やってしまったという思い。
これで、良くも悪くも俺たちの関係は終わるんだと。懐かしさに思いを馳せる。
初めて会ったとき。
クラスが一緒になって喜びあったとき。
一緒にプールへ行ったとき。
二人で同じ習い事をしたとき。
最近の想い。
久しぶりに彼女の顔を見た。
しっかりと女になっていて、すごくドキドキした。
それから目まぐるしく動く日々。この一年は本当に楽しかった。
その感情に嘘偽りはなかった。
ああ、俺は本当に。
「好き、だよ……」
握り締めた携帯が、終わりを告げるように。
震えた。