人を自殺させるだけの簡単なお仕事です - 暇つぶしのゆいたんねる - 2ページ

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人を自殺させるだけの簡単なお仕事です

投稿日:2017年3月12日 更新日:


 

43: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 09:55:14.28 ID:vYora2ZFO
あげます

 

46: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 12:35:35.16 ID:Ngo8f8dj0

そこは非常に坂の多い街です
階段や段差がそこら中にあり
自転車に乗る人はめったにいません

傾斜が20%をこえるところも多くあり
また、狭く曲がりくねった道が多いところです

その中を、転べば折れそうなほど華奢な足で、
どこまでもどこまでも歩いてもらいます





 

47: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 12:49:05.04 ID:Ngo8f8dj0

キリギリスやコオロギの鳴き声が響いていました
ひどく蒸し暑い夜でした
たちまち女の子は汗だくになります

靴のせいもあり、三時間ほど歩いた辺りからは、
脚全体がひどく痛むようになります

特に土踏まずとふくらはぎには激痛が走り
一歩一歩に苦痛を感じるようになってきます
顔を上げることもままならない状態です

 

48: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 13:19:22.22 ID:Ngo8f8dj0

どうしようもなく喉が渇いたときには
自販機の前でコントロール権を渡してやります
小銭だけは持たせてきたのでした

ポイントは、彼女が自分の意志で
飲み物を買って飲むということです

それでも疲労はどんどん溜まり
痛みはどんどん増してゆき
お腹はどんどん空いていきます

 

49: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 13:27:07.54 ID:Ngo8f8dj0

八時間ほど歩いたところで
標的はようやく目的地につきました

そこは、街を一望できる展望台です
螺旋階段をのぼりきったところで
僕は標的の女の子の操作を解除します

体力の限界を超えて動かされていた彼女は
途端にその場に崩れ落ちますが
彼女の体は、あらかじめ準備しておいた
椅子の上にちょうどおさまります

テーブルをはさんで、向かい側に僕が座っています

 

51: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 13:37:07.69 ID:Ngo8f8dj0

たかだか数百円のカップラーメンを
汁も残さず食べきった卑しい標的は、
自分が死にたがっていたことも忘れて
手摺に肘を乗せて、街を見下ろして
「きれいー」とはしゃいでします

物を考える力がなくなっているらしく
普段のように表情に抑制がありません

向きを変えようとして、足を絡ませて、
おもいっきり笑顔で転んでいます

52: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 13:48:27.84 ID:Ngo8f8dj0

「ところで、私のこと、殺さないんですか?」
標的は振り返って僕にたずねます

僕は説明しようとしますが、上手く言葉が出てきません
僕自身も物を考える力がなくなっていました

標的は八時間歩いて疲弊しきっているわけですが
こちらとしても、八時間標的を歩かせ続けるのは
自分で歩くのと同じか、それ以上に疲れるものなのです

 

53: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 13:58:30.99 ID:Ngo8f8dj0

面倒なので、いったん標的を家に帰すことにしました
今日のところは、飲み食いする喜びを
身体に叩き込むだけで勘弁してやろう、というわけです

僕が手招きすると、標的は黙ってついてきました
よく分かりませんが、従順で扱いやすい子です
どうせ操られるだろう、という諦めでしょうか

僕たちはふらつきながら螺旋階段を下りました
車のドアを開けて、運転席に乗り込むと
突然、猛烈な眠気に襲われました





 

54: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 14:07:05.41 ID:WzvDgOyc0
1さんみたいな職業があったのなら
自殺は無くなるんじゃないかな?
だって、死ぬこと以上に生きることの
大切さ、素晴らしさがわかるじゃないか!

 

55: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 14:11:23.44 ID:Ngo8f8dj0

標的が車の前で困ったような顔をしているので
助手席を開けて「乗れ」と言います
標的は「失礼します」と言って乗り込んできます

とても眠気に耐えきれそうもないので
十分ほど寝てから出発しようと決め
携帯の目覚ましをセットしている最中に
僕は眠りに落ちてしまいました

 

64: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 00:00:26.11 ID:Ngo8f8dj0

暑くて目が覚めました
車内には容赦なく朝の光が差し込んでいます

左に目をやると、女の子が眠っていました
僕はドアを開けて外に出て
展望台の下にある水道で顔を洗いました

体もずいぶん汗でベタついていたので
車に戻ってタオルを取りに行くと
ちょうど標的が目を覚ましたところでした
眠そうな目でこちらを見ていました

 

66: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 00:14:32.34 ID:dXNG+K4x0

二人で並んで体の汗を濡れタオルで拭きとりながら
さてどこから説明したものか、と考えました

乾いた風がひんやりと心地よいです
標的は靴下まで脱いで足を洗っています

普通なら標的の方から何か聞いてきそうな物ですが
この女の子はさっきから、何一つ訊ねてこないのです

参ったな、と考えているその時でした

「綺麗になったことだし、どうぞ」

突然、標的はそう言うと、”気をつけ”の姿勢をとり、
僕の顔をまっすぐ見据えました

 

68: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 00:23:43.83 ID:y8jeKPAfO
うむうむ

 

69: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 00:27:38.04 ID:dXNG+K4x0

標的は両腕を広げて掌をこちらに向け、言いました
「落とすなり、吊るすなり、好きにしてください」

前髪から水滴がぽたぽた落ちて
濡れた手足がきらきら光っています

やっぱり気に入らないな、と僕は思います
「そのうち殺すさ、とてもひどいやり方で」

「とてもひどいやり方ですか」
標的は間抜け面で繰り返します

「ああ。だから、まず車に乗れ」

標的は靴を履き、車の方へ歩いて行きます

 

70: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 00:39:27.04 ID:dXNG+K4x0

しっかりした朝食をとらせると
僕は標的を高校まで送り届けました

少しでも教室への滞在時間を減らしたくて
遅刻寸前に学校に来る主義の標的としては
むしろいつもより早く登校したことになります

車を降りると、標的はこちらを振り返り、
小さく頭を下げ、歩いて行きました
呑気なものです





 

71: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 00:48:50.28 ID:dXNG+K4x0

こちらも一限の講義があるのですが
その前にひとつ、やっておくことがあります

目を閉じて、標的の顔を思い浮かべます
彼女はちょうど教室に入るところでした

標的は、なるべく目立たぬように、
静かにドアを開けて中に入ります

それでもドアの近くにいた連中は、
誰が来たのかを確認しようと目を向けます

そのとき、標的の表情がぱっと明るくなり、
口からは「おはよう」と朝の挨拶が出てきます
もちろん僕の仕業です

 

72: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 00:58:30.92 ID:dXNG+K4x0

周りの連中は誰も挨拶には応えません
それは勿論、誰も、彼女が挨拶してくるなどとは
想像さえしていないからです
聞き間違えだろう、くらいにしか思っていません

標的の顔が真っ赤に染まります
恥ずかしくて仕方がないのでしょう
死ぬのは平気でも、挨拶を無視されるのは嫌なのです

 

75: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 01:13:08.03 ID:dXNG+K4x0

ですがその後も、標的が廊下で
クラスメイトと擦れ違うたびに
僕は標的に感じ良く頭を下げさせました

標的はノートに「かんべんしてください」と
書いて僕に見せようとしていましたが
僕は何の反応もしてやりませんでした

 

76: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 01:20:59.42 ID:dXNG+K4x0

昼休みになると、標的はカロリーメイトを口に放り込み
イヤホンを耳にさして勉強を始めようとしたので
僕は体をのっとってイヤホンを引っこ抜きました

イヤホンなんてつけていたら、初めから周りとの
コミュニケーションを諦めている人みたいに見えるからです

標的はノートに「よけいなお世話です」と書きました

僕は標的の手を借りて、その文に取り消し線を引きます
そしてのその下に、「いやがらせ」と書いておきました

それを見た標的は、「ひどい」とだけ書き込みます

 

77: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 01:33:45.95 ID:dXNG+K4x0

授業がすべて終わると、標的は誰よりも早く教室を出ます
いつもはさり気なく一番目に帰宅する標的ですが、
この日はなりふり構わず急いで出て行きます

これ以上僕に何かされたら敵わないと思ったのでしょう
しかし、帰宅後、彼女に更なる悲劇が訪れます
もちろん実行犯は僕なのですが

標的の体をのっとった僕は、再び身辺整理を始めました

 

78: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 01:41:56.58 ID:dXNG+K4x0

一番下の引き出しにしまわれた、
カティサーク、ジョニーウォーカー赤、
エンシェントクランといったウィスキー

どこで手に入れたかは知りませんが
おそらく彼女の一番のお友達であるそれらを
僕はすべて洗面台に開けて流してしまいます

標的の口が「やめっ、もったいない」と動こうとします
今までで一番必死な反応だったかもしれません
ですが、知ったことではありません





 

79: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 01:51:48.67 ID:dXNG+K4x0

さて、彼女のスケジュールによれば、
ベッドに横になって音楽を聴きはじめる頃合でしたが、
僕は酒瓶をビニール袋に入れて引き出しに戻すと、
そのまま彼女を家の外に出しました

ただし、今回は八時間ぶっ通しで歩かせたりはしません
十分ほど歩いたところで、目的地の公園に着きます

二台あるブランコの片方に、彼女を座らせます
当然、もう一台のブランコには、僕が座っていました

 

80: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 02:01:24.80 ID:dXNG+K4x0

辺りは薄暗く、日暮が近くで鳴いています
僕は両手に抱えていた植木鉢を標的に渡します
標的は「なんですかこれ」と聞いてきます

「アグラオネマニティドゥムカーティシー」と僕は答えます

「いえ、品種のことじゃなくて。なんですかこれ」

「部屋が殺風景すぎるからな。観葉植物だ」

「……これも、いやがらせなんですか?」

「プレゼントに見えるか?」

 

81: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 02:14:45.36 ID:dXNG+K4x0

標的は植木鉢を掲げて、眺めます
「見えなくもないですね、綺麗ですし」

「そういうところが、気にくわないんだ」
ブランコから下りて、僕は標的の前に立ちます

標的は植木鉢を膝の上に抱えたまま
少し緊張した表情で僕の顔を見ます

しばらくその状態が続くと
ふいに標的は植木鉢を足元にやさしく置いて
「殺しますか?」と言ってブランコをこぎはじめました

 

82: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 02:27:02.63 ID:dXNG+K4x0

僕はあらためて聞いてみます
「結局お前は、殺されたがってるのか?」

「んー、殺した方がいいですよ」と標的は答えます
「初めてでもないんでしょう? 私で何人目ですか?」

僕はしばらくこう考えてから、こう言います
「どこまで知ってるんだ?」

標的はブランコをとめ、植木鉢に目をやり、
僕と目は合わせずに、こう言いました

「知ってるも何も、今あなたがしてるのは、
むかし私がしてたこと、そのままなんですよ」

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