人を自殺させるだけの簡単なお仕事です - 暇つぶしのゆいたんねる

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人を自殺させるだけの簡単なお仕事です

投稿日:2017年3月12日 更新日:


1: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:29:03.95 ID:4S5e64sI0

僕の仕事は、主に、部屋の掃除でした

なぜ他人の部屋をわざわざ掃除するのかと言うと
自殺には身辺整理がつきものだからです

きちんと掃除して、遺書を残して死ねば
その人の自殺を疑う人は、まずいません
とにかく綺麗にすること、それが大事なのです

手順は以下の通り定められています

①その人の体をのっとる
②辛そうに振る舞う
③身の回りを綺麗にする(これが一番大変)
④遺書を書く
⑤死ぬ

3: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:31:34.87 ID:4S5e64sI0

そのとき標的となっていたのは
神経質そうな目をした女の子でした
結果的には、これが僕の最後の仕事となりました

それまで僕が自殺させてきたのは
いかにも悪いことをしていそうな人たちで
こんなに若く、無害そうな標的は初めてでした

華奢で色白で、視線は常に下を向いていて、
笑い方がとっても控えめな女の子でした

 

2: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:31:11.64 ID:qBMIlllg0
今まで何人くらい?

 

4: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:33:23.11 ID:4S5e64sI0
>>2
この女の子が七人目となる予定でした

 

5: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:34:14.68 ID:jwqGr8xe0
>>1
スタンド使いか? 魔法使いか?
その両方か?

 

8: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:35:58.42 ID:4S5e64sI0
>>5
職業特権です





 

9: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:38:14.18 ID:4S5e64sI0

それでも標的とされている以上
悪い人間であることに間違いはありません

人の二、三人、平気で殺しているのでしょう

僕は目を閉じて、遠く離れた場所にいる
標的の顔を思い浮かべ、体をのっとりました

八月の、よく晴れた日のことです
最後の仕事が始まりました

 

10: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:43:16.07 ID:4S5e64sI0

標的は、窓の外を見ていました

場所は高校の教室で、授業中のようです
誰しも黒板とノートを交互に見て
忙しそうに板書を取っています

その中で、標的の女の子だけは、
のんびり外を眺めていたのでした

外は、特に面白いものがあるわけでもありません
バス停、ローソン、薬王堂、ジョイス、
やけに目立つボンカレーの看板、
いかにも田舎っぽい風景が広がっています

 

11: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:47:23.12 ID:4S5e64sI0

試しに、標的の手を動かしてみました
ペンが妙に大きく感じるのは
この子の手がそれほど小さいということなのでしょう

教師の板書を丁寧に写してみます
すらすら動いて、調子はよさそうです
標的が抵抗してくる様子もありません

ふと教師の顔を見ると、こちらを見て
驚いたような顔をしていました
その意味はもう少し後になってわかります

 

12: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:50:59.04 ID:4S5e64sI0

標的の女の子の出方をうかがうために
僕はノートに「はじめまして」と書きました

そこで一旦、操作を解きます
標的は自分の手を開いたり閉じたりして
自由になれたことを確認していました

自分が操作されている自覚はあるようです
人によってはそれさえも気づかないのですが

標的は、自分の書いた「はじめまして」を
興味深そうにじっと見つめていました
それ以上の反応はありませんでした

 

13: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:55:26.54 ID:4S5e64sI0

授業が終わり、昼休みが始まります
再び標的の体を乗っ取ります
ここからが本番です

まずは標的の知人に対して、
標的が辛そうにしている姿を見せる必要があります

ためいきを増やしたり、口数を減らしたり、
いつもと違うことを言わせたり

そうすることで、「自殺の前兆はあった」と
周りが思い込み、自殺にリアリティが出るのです

 

15: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 12:58:04.71 ID:4S5e64sI0

僕は教室を見回して、標的の友人を探しました

しかし、話しかけてくる人どころか、
こちらに視線を向ける者さえいません

皆、それぞれに固まって、昼食をとりはじめます
僕は誰かが声をかけてくれるのを待っていました





 

16: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 13:03:57.55 ID:4S5e64sI0

昼休みの半分まで来ても
標的は取り残されていました

僕はそこでようやく気付きます、
この教室で、この子(標的)が孤立しているのは
とっても自然な状態なのだということに

どうやら標的は、いわゆる「ひとりぼっち」のようでした

 

18: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 13:09:07.84 ID:4S5e64sI0

困ったことになったと思いましたが、
良く考えてみると、好都合なことでした

周りと接点のない人物というのは
いつ死んでも説得力があるからです

インタビューされた同級生に
「無口な人だった」の一言で片づけられるような
「その他」のカテゴリーに属する人種

 

19: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 13:13:39.53 ID:4S5e64sI0

しばらく放っておくことにしました
なにせ、することがありません

標的は、理想的な「自殺しそうな人」を、
黙っていても演じてくれるようでした

僕は標的の操作を一時的に解除しました

 

20: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 13:19:20.98 ID:4S5e64sI0

僕はアパートの一室から標的を操っていました
顔さえ知っていれば、どこからでも操れるのです

目覚ましを合わせ、僕は昼寝を始めました
人を操るには体力がいります

次の仕事は、一番大変な「身辺整理」です
それまでに体調を万全にしておく必要がありました

 

21: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 13:25:06.51 ID:4S5e64sI0

目を覚まして標的の様子をうかがうと、
ちょうど最後の授業が終わり、標的が、
誰よりも早く教室を出るところでした

部活には入っていないようです
ウォークマンのイヤホンを耳に差し込むと
標的の女の子はまっすぐ家に帰しました

彼女が帰宅し、自室に入ったところで
僕は再び体をのっとりました
標的の目を通して部屋を見渡します

「なんだこれは?」というのが
僕が最初に抱いた感想です

 

22: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 13:31:22.68 ID:4S5e64sI0

しばらく途方に暮れてしまいました

だって、身辺整理しようにも、
最低限の家具と教科書類以外
その部屋にはなんにもないのです

雑誌も、本も、テレビも、パソコンも、
クッションも、ぬいぐるみも、観葉植物も、
その部屋には、なーんにもないのです





 

25: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 21:55:54.06 ID:4S5e64sI0

慣れた僕でも、人によっては
五時間くらいかかる身辺整理が、
この子だと、二分で済んでしまいました

唯一のゴミは、酒瓶でした
一番下の引き出しに、いくつか入っていました

僕は嬉々として瓶を袋に詰めましたが、
よくよく考えると、酒瓶に関しては、
置いてあった方が自殺者らしくなるので、
もとあった場所に戻しておきました

 

26: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 22:01:42.56 ID:4S5e64sI0

唯一、人間性を感じさせるものとして、
棚に無造作に置かれたCDがありました
それを聞くためのプレイヤーと、ヘッドホンも

アレサ・フランクリン、ジャニス・ジョプリン、
ビリー・ホリデイ、ベッシー・スミス
いかにも憂鬱な人間のチョイスでした

これに関しても、部屋に置いてあった方が
自殺者らしくなるので、放っておきました

 

27: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 22:04:02.98 ID:4S5e64sI0

こんなに楽な仕事は初めてでした
お膳立てされていたといってもいいくらいです

今すぐ自殺させても、何の問題もないくらいでした
下手に僕が手を加えないほうがよさそうです

拍子抜けと言うか、騙されているような気さえしました
とは言え、楽であるに越したことはありません

 

28: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 22:15:55.96 ID:4S5e64sI0

仕上げに、標的の手で、遺書を書かせます

世界史の教科書の端を破り取って、そこに
「むなしいので死にます」と書きました

多分、この女の子が遺書を書くとしたら、
ごくごくシンプルで、誰のせいにもせず、
それでいて案外切実なことを書くと思ったのです

 

29: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 22:43:01.15 ID:4S5e64sI0

遺書をポケットに入れて、
家を出ようとしたときでした

標的の女の子が、初めて反抗しました
それも、信じられないほど強い力で、です
危うくコントロール権を奪回されるところでした

「待って」と標的は口を動かしました
無理に動かしたので、唇が切れ、
そこから血が流れだしました

驚く半面、僕は安心してもいました
このままだと、上手く行き過ぎて
逆に気味が悪いと思ったからです





 

30: 名も無き被検体774号+ 2012/07/22(日) 22:53:10.22 ID:4S5e64sI0
標的の女の子は、こんなことを言いました
「遺書の文面を、少しだけ、弄らせてほしいんです」

 

32: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 00:17:38.19 ID:Ngo8f8dj0

僕は自分で言う代わりに少女に喋らせます
「どういうことだ?」
傍から見ると、女の子の独り言です

少女は答えます
「『面倒なので死にます』に変えさせてくれませんか?」

「どうして?」

「こいつなんか、死んだ方が良かったんだ、
って思わせたいんです。できることなら」

 

33: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 00:23:19.80 ID:Ngo8f8dj0

僕はしばらく黙っていましたが、
それくらいはいいか、と思い、
文面を彼女の言う通りに直しました

標的の口が、「ありがとうございます」と
言おうとしたのが分かりました

結局、命乞いは一度もされずに終わりそうです
いったいこいつは何を考えているんだろう?

そこで僕はふと、あることに気付きます

 

35: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 00:32:27.14 ID:gdZcFfZ/O
読んでるよー

 

37: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 00:43:15.07 ID:Ngo8f8dj0

ひょっとするとこの女の子は、初めから
自殺する気でいたのではないでしょうか

身辺整理も済んで、遺書の内容も決めて、
ただ、踏ん切りがつかずにいたのではないでしょうか

だとすると、僕のやっていることは
自分では決心をつけられずにいた自殺志願者を
望みどおりに殺してやる、というだけのことになります

 

38: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 00:54:46.70 ID:Ngo8f8dj0

そういうのは、僕の望むところではありませんでした
死にたがっている人を殺すのはつまらないことです

殺す前に少し、この女の子をいじめてやろう
そう僕は思ったのでした

標的の体をのっとり、遺書とは別の書き置きを用意し、
それを居間のテーブルに置いて、僕は家を出ました

女の子には、これから一晩中歩いてもらうことにします

 

39: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 01:29:50.83 ID:1o5Tai2d0
支援

 

42: 名も無き被検体774号+ 2012/07/23(月) 06:44:13.56 ID:GDsYUNS2O

面白そうだ

支援

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