一つの村が消えた話をする
投稿日:2017年2月25日 更新日:
八月十五日 辿静祭当日 午前一時
俺とB、そして神主と神主一族は、障芽池へと続く獣道の途中にいる。
神主一族の人数は数十人で、頼もしいと思った。
俺「この辺りから、二人で行きます」
B「必ず、Aを助けて来ます」
神主一族「頼んだぞ」
神主「教えた事を忘れずにな」
俺とB「はい」
俺とBは一本の獣道を進む。
途中から、山の獣の声が聞こえなくなってきた。
俺「そろそろか」
B「だな」
暗がりを抜けた先には、小屋があった。
俺とBは、無言で道具の最終確認を行った。
俺「あれ」
B「どうした?」
俺「いや、鋏なんて入れたっけなって思ってさ」
B「裁断鋏か、何かの役に立つんじゃないか?」
俺「そっか」
俺とBは作戦の最終確認をした。
作戦はこうだ、
俺とBで小屋に一気に入る。
下の部屋に障者がいた場合、Bが相手する。
その隙に俺が二階へ行き、Aを助ける。
二階に障者がいた場合、障者を足止めし、Aを連れて一階へ降り、BとAを守りながら、神主一族の下へと走り抜ける。
作戦と言うような作戦ではないが、この方法で行くしかないと思った。
俺「行くぞ」
B「ああ」
俺とB「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
二人で突進するように、さながらアニメの様に小屋に入った。
下の部屋に障者はいなかったので、下はBに任せ、俺は階段を駆け上がった。
二階の扉を思いっ切り蹴破った。
「ドン!!!!」
俺「A!!」
俺はAの名前を叫び、中に居るであろう障者を威嚇した。
部屋の中には・・・・・・・
全裸の状態で手を天井から吊るされた紐で縛られ、足を紐で床に固定されたAがいた。
が、中に障者はいなかった。
A「俺君」
俺「A!!!」
俺はAが縛られている事よりも、単純に生きていた事に喜び、Aを縛っている紐を鞄に入っていた裁断鋏で切り、清めの水を口に含ませて、飲ませ、背中にそのままお札を張り付けた。
そして、塩を身体に振りかけた。
俺はAを抱え、二階の階段を降りる直前、
A「俺君!、後ろ!!」
俺は後ろを向いた。
男性障者「OmyいえkrOOOOOOsrあcjんじcjぞscjじおn」
後ろには、首を吊ったままこちらを見つめる黒い何か、
いや、男性障者が俺には聞き取る事の出来ない言葉を発している。
俺「○○○~!!!」
俺は神主から教わっていた真言を唱えた。
だが、男性障者はこっちに近づいてくる。
俺「何だよ!!!!!」
俺はAを抱えたまま、後ろに下がって行く。
A「△△△~!!!」
その時、Aが俺の知らない真言を唱えた。
男性障者「んこvそkvmぢんヴぉzm???????」
男性障者の身体が痙攣しているように見える、
俺はAを抱えたまま、階段を駆け下りた。
そして俺達は小屋を抜け出した。
B「おい俺!!!速く行くぞ!!!」
俺「ああ!」
俺達は獣道を走っている、
女性障者「あああああああああああああああ・・ああああああああああああ」
俺「来たか」
B「○○○~!!!」
女性障者「あああああ・・・・・ああ・・あ・・・・・・・・・・」
Bが教わった真言を唱えると、
女性障者は姿を消した。
女性の方には効くようだ。
B「効いたみたいだな」
?「ポーン・・・・・・・・・・ポーン」
聞いた覚えのある音、嫌な予感がする。
女性障者「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
突然、女性障者が雄たけびをあげながらBの足元から出現し、Bの脚を掴んだ。
俺「B!!!!!!!」
B「俺!!!!!先に行け!!」
Bはそのまま、そのまま女性障者に引きずられて行った。
Bを後で必ず助けると誓って、俺はひたすら走った。
神主一族の下へ着いた。
神主「よく戻ってきた!!、B君は?」
俺「捕まった、俺とAを逃がすために」
神主「そうか」
神主一族「Aをすぐに本殿へ!!」
俺と神主、神主一族は直ぐに村に戻った。
そこで、ある事を村人から神主へ伝えられる。
村人「B一族が先程、この村を出て行った」
神主「!?」
神主一族「禁を破るとはな」
村人の話を纏めると、
神主一族が村から障芽池に行っている間にその隙を付いて、B一族全員が車に乗り、村の出入り口の封鎖を強行突破したそうだ。
今日は辿静祭当日であり、村から出ることは第二の禁を破った事になる。
B一族が村を出て行った理由は、恐らくは村八分による追放を恐れた為だと考えられた。
俺は、自分の息子で跡取りでもある子孫の帰りもまたずに、この村を保身の為に逃げて行ったB一族が、正直、罰でも当たればいいのにっと思っていた。
八月十五日 辿静祭当日 午前六時
神社の本殿へと通されたAは、身体の穢れを消滅させる為の禊を行う用意がされた滝へと向かった。
禊にはAの両親が付き添うらしい。
俺はその間、本殿へともう一度呼ばれ、神主一族の方と話をする事になった。
神主一族「単刀直入に言わせて貰うが、B君についてだが、恐らくはもう手遅れだろうと思う。
Aは若い女性と言う点が障者に取っては生かす利点になった為、監禁され、遊ばれる程度で済んだかも知れないが、B君は若い男性だ。
男性障者に取って、男性は邪魔にしかならない。
その部分だけで、B君は殺されるだろうからな」
俺は助けると誓った時、薄々感じてはいた。
もうBを救う事は出来ないのでは無いかっと。
俺は分かっていながらも、親友を失った事に涙した。
神主一族「彼の魂は、あの小屋に永遠に留まり続けるだろう。
彼はあの小屋で「第二の男性障者」となる。
我々に障者はどうする事も出来ない、あの存在は既に輪から外れた存在なんだよ」
神主一族「君がまだ、あの小屋に呼ばれているのならば、もう一度小屋に行けば会えるだろうな。
だが、今度は確実に君は殺されるよ?
それに、君が死ねばAは一人になるんだよ?
その事を忘れずに」
俺は泣きながらも、泣いても済む問題では無いと分かっていた。
神主一族は、俺の聞きたかった事を全て話てくれた。
俺が死ねば、Aは一人になる。
Bには悪いが、俺は死ぬわけにはいかない、そう思った。
この時、自分が非道だと初めて認識した。
八月十五日 辿静祭当日 午前十時
Aの禊が終わり、障者によって障られた部分、簡単に言えば身体全体の清めが始まった。
Aと俺は全裸に白装束を纏った状態で、祝詞の途中で何度も冷水を身に浴びる。
Aは途中で涙ぐんでいる所もあったが、三時間の清めを乗り切った。
最後、自分の身体から何かが消えていくように体全体が軽くなった。
清めを終えた俺は、神主からAの事について教えて貰った。
神主「Aや君の穢れ障りは、これで完全に消滅した。
Aについてだが、身体の至る所から障りが抜けて行くのを私は見た。
恐らくあの小屋では監禁と同時に、暴行に近い行為を何度もさせられたのだ」
当然の事だが、神主の手は怒りに震えていた。
俺に何故、その話をしたのかを神主は語った。
神主「何れ君がAの傍に付いて、正しい判断を下す時がくるだろう。
Aは君の身を気に掛ける。
今度こそ、君が正しい判断をする事を私に誓ってくれ」
俺は神主の予言めいた言葉を聞き、今度こそAを守ると強く誓った。