人を自殺させるだけの簡単なお仕事です - 暇つぶしのゆいたんねる - 6ページ

2ちゃんねるのまとめサイトです。名作を中心に。

暇つぶしのゆいたんねる



名作

人を自殺させるだけの簡単なお仕事です

投稿日:2017年3月12日 更新日:


 

485: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 22:20:13.30 ID:Axa50L7/0

「なんで最近、いやがらせしてくれないんですか?」

青空は腕の力を緩めると、そのまま
腕を下げて、僕の胸の辺りで交差させます

「どうして体のっとってくれないんですか?
どうしてひとりになりたがってる私を
くもりぞらさんは野放しにしておくんですか?」

青空の人差し指が僕の胸をとんとん叩きます





 

486: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 22:27:27.47 ID:Axa50L7/0

「ちょっとさみしいじゃないですか。
さみしいのが、私は好きなんですよ。
だからそれを阻止してくださいよ。
そういうのがくもりぞらさんの役目でしょう?

青空の人差し指の動きが止まります

「それに私は、死期が近いからって慌てずに、
いつも通り過ごして死にたいと思ってるんです。
だから、それさえも邪魔してくださいよ。
なんで言わないとわからないんですか?」

 

487: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 22:37:17.89 ID:Axa50L7/0

青空の両手首を僕が両手でつかむと
「あ、動いた」と青空は嬉しそうに言います

酔っ払いの言うことは、話半分に聞くのが正解です
ですが、青空は「気にしないで」いてほしいらしく
そうなると僕としては、気にせざるを得ないのです
そういうのが、僕の役目らしいですから

 

488: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 22:44:24.19 ID:Axa50L7/0

僕は青空の手を離して、振り返って青空と向かい合い、
まず、いま喋れないのだということを説明しようと思い、
自身の口を指差した後、両人差し指で「×」を作りました

すると、青空は何を勘違いしたのか
「だめって言われるとしたくなります」と言って
僕が指差したところに自分の唇を重ねてきました

その後、僕は苦労して携帯に文章を打ち込んで
さきほどあったことを説明したのですが
青空は「はい」「はい」と半目で頷き続けた挙句
人のベッドですうすう寝息を立てて寝てしまいました

 

503: 名も無き被検体774号+ 2012/08/05(日) 10:02:03.22 ID:P3gLkbO30

青空の寝息を聞いているとこちらも眠くなってきたので、
寝ている青空の頭をくしゃくしゃやった後、ソファで眠りました

目を覚ますと、体が大分楽になっていました
僕は早口言葉をためします

「とてちてた、とてちて、とてちて、とてちてた 」

どうやらきちんと喋れるまで回復したようです
冷蔵庫からきんきんに冷えたビール缶を取り出し
へそをだして寝ている青空の頬に当てます
「つめたい」と言って青空は目を覚まします

 

504: 名も無き被検体774号+ 2012/08/05(日) 10:11:17.27 ID:P3gLkbO30

僕は言います、「いつまで人のベッドで寝てる?」

「くもりぞらさんが喋ったー」と青空は喜びます

ビールを飲みながら「そろそろ帰れ」と言うと、
青空は眠たげな目で「いやです」と言い、
その後時計を見て「うわあ」と驚いていました

青空はベッドの上に三角座りして、
それからしばらく黙り込みました
現状について思いを巡らしているようでした





 

505: 名も無き被検体774号+ 2012/08/05(日) 10:19:07.49 ID:P3gLkbO30

青空はベッドの上に正座して言います
「あの……さっきはべたべたしてすみません」

「おお、ちゃんと覚えてるんだな」

「あ、そっか。忘れてることにしとけばよかった」
青空は正座したまま横に倒れます
「くもりぞらさん、私もお酒欲しいです」

「そろそろ帰れ。時間が時間だ」

「時間が時間で時間ですね」
青空はそう言って一人で笑います

 

506: 名も無き被検体774号+ 2012/08/05(日) 10:30:13.53 ID:P3gLkbO30

「しかし参ったな」と僕は言います

「お前が嫌がらせされるのが好きとなると、
嫌がらせをしないことによる嫌がらせさえも
結果的に嫌がらせになってしまって、
最終的には喜ばせてしまうことになる」

「難しいことは考えずに、普通に
いやがらせしてくれればいいんです」

「なるほど」と僕は言い、ベッドの青空の
膝の下と首の後ろに手を差し入れ
ひょいと持ち上げて玄関まで運びました
その軽さに、僕はちょっと驚きます

 

507: 名も無き被検体774号+ 2012/08/05(日) 10:35:22.74 ID:P3gLkbO30

そのままドアを開けて外に出ると
「もういいですよ」と青空が言います
だからどうしたという感じです
僕はそのまま歩きつづけます

青空は僕を見上げて言います
「はいはい、そういう嫌がらせですか」

「屈辱的な仕打ちというやつだ」

「私の足の状態に気づいてたんですか?」

「さあな」

「くもりぞらさんは発声器官ですけど、
私は足の方をやられたんですよね」

 

508: 名も無き被検体774号+ 2012/08/05(日) 10:41:13.22 ID:P3gLkbO30

「というわけは、抵抗したんだな?」

「ええ。だって私、殺されるなら、
くもりぞらさんにって決めてますし」

「次に俺が何を言うか分かるだろう?」

「『じゃあ殺してやらない』、ですよね。
だったらせめて、私はくもりぞらさんより先に、
ここからいなくなりたいなあ」

「そうか。じゃあ俺は、俺より先にお前を死なせない」

「じゃあ私は、私より先にくもりぞらさんを死なせない」

そういうやり取りを交わした後で、
僕はちょっと恥ずかしくなってきます
これじゃあまるで永遠を誓い合ってるみたいじゃないか

 

509: 名も無き被検体774号+ 2012/08/05(日) 10:43:59.50 ID:P3gLkbO30

もちろん、物事はそんなに
思い通りにいくものではありません

それが気休めに過ぎないことは
お互いにわかっているし、経験上、
死ぬということがそんなに優しくて
綺麗なものではないことを知っています

 

512: 名も無き被検体774号+ 2012/08/05(日) 11:10:32.63 ID:TR+w36IG0
青空たんのひねくれた会話がタマランチ会長\(^^)/

 

519: 名も無き被検体774号+ 2012/08/05(日) 20:28:02.62 ID:5wV6syAf0

青空たんカワユスww

是非完結させてもらおうではないか

 

541: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 22:46:44.39 ID:49/DQkd80

翌日、青空をいつもの公園に呼び出そうとした僕は
人の体をのっとる力を失ったことに気付きました

ですが、結局青空は公園に来ました

「どうせ呼ばれるだろうと思ったから、
こっちから来てやったんです」
青空はしたり顔でそう言います

僕は「やるじゃないか」と言って
青空の頭を撫でてやりました

青空は頭を両手で押さえて
「子供扱いしないでください」とむくれます





 

545: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 22:54:30.79 ID:49/DQkd80

「お前はいつも通り過ごして死にたいらしいな」

「だって、せっかく死ぬ覚悟が固まってても、
ふとした拍子に幸せな思いをしちゃったら、
苦労して固めた覚悟が崩れちゃいますからね。

ただでさえ、命が薄らいできたせいか、
異様に感動しやすくなっちゃってるんです。
気をつけないとすぐ幸せになっちゃいますよ。
感傷的になるなのは避けたいんです」

そこで僕は、センチメンタル・ジャーニーを提案します
どうにかして青空を感傷的にしてやろうというわけです

 

547: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 23:07:33.15 ID:49/DQkd80

青空は窓からの風を心地よさそうに浴びて
小さな声で何かを歌っていました
こっちには聞こえていないと思っているのでしょう

「ままー じゃすきーらめーん」

それは僕もよく知っている曲でした
運転席でハンドルを握る僕は
一緒に唄おうとしたのですが
やっぱりやめておくことにしました

青空の声をきいていたいと思ったのです
趣味が酒と音楽だけというだけあって
さすがに歌い方というのを心得ていました
選曲も中々状況にマッチしています

 

548: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 23:14:31.53 ID:49/DQkd80

屋台でホットドッグとクレープを注文し
ベンチに並んで座ってそれらを食べます

ひどく古いコカコーラの赤いベンチで
塗装は半分以上剥げてしまっています

青空はサンダルを脱いで横向きに座り
素足を僕の膝の上に乗っけてきます

「ずっと思ってたんですけど、
私、くもりぞらさんについて、
ほとんど何も知らないんですよね」

 

549: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 23:18:44.87 ID:jW/AsEl50
追いついた支援&保守

 

553: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 23:28:34.41 ID:49/DQkd80

「たとえば、私は音楽が好きです。
それはくもりぞらさんも知ってるでしょう?」

「ああ。見た。悪くない趣味だと思う」

「くもりぞらさんに褒められた!」

「こういう問題に関してはフェアなんだ、俺は」

「……ええと、それで、くもりぞらさんは、
何か好きなこととかあるんですか?」

「それは、うんと好きなもののことか?
それとも、ただ好きなもののことか?」

「うんと好きなもの」青空は僕の発言の
意図が分かったらしく、にんまり笑います





 

554: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 23:32:46.11 ID:49/DQkd80

「俺は、ゆっくり回転する物が好きだ」

「……うーん、説明を求めます」

「メリーゴーランドとか、観覧車とか、
オルゴールとか、時計とか、ひまわりとか」

「地球とか、月とか、太陽とか?」

「ああ。そうだな。天体も好きだ」

「私と、どっちが好きですか?」

「……ん?」

「ゆっくり回転する物と私」

「前者だな」

「……じゃあ、ゆっくり回転する私」
青空は立ち上がり、ゆっくり回りはじめます

 

556: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 23:42:01.70 ID:jW/AsEl50
かわいいいいいいいいいいいいいいいいい

 

557: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 23:42:31.15 ID:unF1Ok820
あおぞらさんかわいいです

 

558: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 23:46:23.49 ID:49/DQkd80

僕はゆっくり回転する物が好きなので
ベンチから身を乗り出して青空を捕まえ、
再びベンチに座り、膝の上に青空をおいて
後ろから両手をまわして確保します

ゆっくり回転する物が好きなわけであって
青空と密着していると異様なほど安心することに
最近気づいたというわけではありません

「こんなに効果あると思いませんでした……」
青空はちょっと動揺した様子です

 

559: 名も無き被検体774号+ 2012/08/06(月) 23:56:47.82 ID:49/DQkd80

自販機で買ったポカリスエットを
保冷剤代わりにして体を冷やしながら
僕と青空は駐車場に戻りました

晴れ渡った空の向こうには、積乱雲が見えました
街路樹に蝉がとまって鳴いています
この蝉も僕たちも、余命は同じくらいでしょう

どこかの家から線香の匂いが漂ってきます
よく日焼けした子供たちが、釣竿を持って
駆け抜けていき、それに合わせて風鈴が揺れます

 

560: 名も無き被検体774号+ 2012/08/07(火) 00:10:28.18 ID:sZcwAnKT0

「このまま逃げちゃいましょうか」

「どこに行けば、あの得体のしれない
超能力から逃れられるっていうんだ?」

「わかんないけど、地球の反対側とかなら、
ちょっと難しそうじゃないですか?」

「それで、その後、どうするんだ?」

「小川が流れてたりするとこなんかに住むんです。
……そうでなきゃ、銀行強盗でもして歩きます?」

「で、八十七発の弾丸を受けて死ぬのか?」

「そうです。ボニー&クライドするんです」

「どっちも、あんまり現実的じゃあないな」

「知ってますよ。冗談です」

 

561: 1 2012/08/07(火) 00:17:58.00 ID:sZcwAnKT0
今日はここまでだ! 寝ろ!

 

562: 名も無き被検体774号+ 2012/08/07(火) 00:18:39.62 ID:+Hb4j2k80
乙!

 

563: 名も無き被検体774号+ 2012/08/07(火) 00:20:11.34 ID:DewMZ7210
おやすみー
いいゆめみれるや!

 

565: 名も無き被検体774号+ 2012/08/07(火) 00:22:35.93 ID:tkyIFHnd0
乙です!
また待ってます!

 

572: 名も無き被検体774号+ 2012/08/07(火) 05:13:34.15 ID:WQ6jW08A0
>>1
あおぞらかわいいなおい
また明日!

 

573: 名も無き被検体774号+ 2012/08/07(火) 08:20:38.83 ID:GeRuIKH70
ほしゅ

 

579: 名も無き被検体774号+ 2012/08/07(火) 14:44:02.79 ID:7e5yrTcT0
面白い
ほしゅ

 

580: !hiroyuki! 2012/08/07(火) 15:15:19.12 ID:J1oDDl8y0
ほしゅ

 

583: 名も無き被検体774号+ 2012/08/07(火) 18:23:50.34 ID:dzt+R6eh0
ほしゅ

 

603: 名も無き被検体774号+ 2012/08/08(水) 10:45:36.20 ID:KxLqpRTL0
ほしゅほしゅ

> 前のページへ  > 続きを読む 

-名作

Copyright© 暇つぶしのゆいたんねる , 2025 AllRights Reserved Powered by AFFINGER4.