人を自殺させるだけの簡単なお仕事です - 暇つぶしのゆいたんねる - 5ページ

2ちゃんねるのまとめサイトです。名作を中心に。

暇つぶしのゆいたんねる



名作

人を自殺させるだけの簡単なお仕事です

投稿日:2017年3月12日 更新日:


 

332: 名も無き被検体774号+ 2012/07/30(月) 21:07:36.54 ID:e6Xcvivh0

青空は褒められたわけでもないのに
ちょっと嬉しそうな表情になります

「でも相手が仮にお前じゃなかったとしたら、
確かに、驚いて、様子見に入るかもしれない」

「なるほど……。あ、そうだ。くらえくもりぞらさん」
青空はそう言いつつ、僕の顔に水を掛けます
僕も無言で二倍の量を掛け返します

しばらくそれを繰り返した後、噴水を出て服を絞り、
水をぽたぽた滴らせながらベンチに行き、
並んで座って服が乾くのを待ちました

時刻を知らせる鐘が広場に鳴り響きます

服が乾くと、青空はくしゃみとあくびを交互にして、
「それじゃあ、また」と言って帰って行きました





 

342: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 01:02:40.41 ID:UnXFum7+I
追いついたー
すごい面白いなこれ!

 

345: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 01:51:58.21 ID:DT3G4WlG0
今日はもう終わりか・・・? ほすほす

 

343: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 01:08:35.28 ID:b+xqAtiY0

俺も追いついた!
今世紀最大の良スレの予感。

がんばって完結させてくれよな!

 

344: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 01:29:30.16 ID:dL3h1UeP0
ほすほす

 

348: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 05:23:57.65 ID:nr1MZvQPO
ほしゅ

 

349: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 07:10:51.73 ID:/g2SBEze0
じれったい!保守

 

357: メイド 2012/07/31(火) 15:29:28.92 ID:K+eK48LF0
ほしゅ

 

358: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 16:41:04.14 ID:1HXuRarX0
ほしゅ

 

369: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 22:34:33.50 ID:rIGoNaRq0

ひょっとすると、僕はもう、二度と青空に
会うことはないのかもしれないな、と思います

向こうがなりふり構わずに来れば、
僕たちがちょっとやそっと抵抗したところで、
速いか遅いか程度の差にしかならないでしょう

どうせなら部屋を思いっきり汚しておこう、
そう僕は思います
片付ける人の苦労を少しでも増やすために

それから二週間が過ぎます

 

397: 1 2012/08/01(水) 10:50:19.65 ID:o8xWRF6G0

その日、喫茶店で本を読んでいると、
自分の名前が呼ばれたような気がしました
もちろん、”くもりぞら”ではない方の

顔を上げると、店員が僕の顔を覗き込んで、
「やっほー」と手を振っていました

同学部の先輩、顔を合わせれば
挨拶はする程度の仲の人です

しばらく、スクリプトに従ったような
様式に忠実な会話を僕らは交わしました

 

371: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 22:42:27.33 ID:rIGoNaRq0

不自然でない程度の時間が経つと、
先輩に気付かれないよう、そっと店を出ます

この店にくるのはもうやめにしよう、と僕は決めます
結構お気に入りの場所だったのですが、
知人がいるとなると、どうしようもありません

次の店を探さなきゃな、と溜息をついたとき
ふいに僕は体をのっとられました

遅かったじゃないか、と僕は思います

どうくるのかと自身の体の様子を見ていると、
まっすぐどこかへ向かって歩きはじめます

 

372: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 22:48:32.83 ID:rIGoNaRq0

これから味わうであろう痛みを想像しながら、
僕は操作に抵抗して、口を動かします

自分を殺そうとしている相手との
コミュニケーションを試みます

「二分でいいから、話を聞いてくれ」

しかし僕の体は構わず動きつづけます

「あんたにも関係のある話なんだよ」

舌は思い切り攣ったような痛みが走り
唇の端が切れて血が垂れてきます





 

375: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 23:03:09.25 ID:aZOJ4cxH0
さて、どうなるか楽しみだ

 

376: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 23:06:14.80 ID:rIGoNaRq0

「なあ、そもそも、どうして自殺させるべき対象が、
頭にぱっと浮かんでくるんだと思う?」

慎重に言葉を選びながら、僕は言います

「俺はこれまで、六人の標的を自殺させてきた。
たぶん、お前と同じようなやり方で。
だが七人目を殺すことが出来なかった」

「そうして今、お前に命を狙われてる。
以前自分が他人にしていたことを、
今度は他人に自分がされているわけだ」

 

378: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 23:13:54.91 ID:rIGoNaRq0

「操られる側になって分かったことだが、
『人の体をのっとって操れる人がいる』
ということを前提として知らない限り、
自分が操作されている事実には、
なかなか気付けるものじゃないらしい。

「それくらい自然に感じられるんだ、
体をのっとられて動かされるってことは。
あるいは、起こっていることが不自然すぎて、
事実を受容できないのかもしれない」

「そこまではいい。しかし、ここから俺が言うのは、
証拠はないし、論理が飛躍しているし、
何より自分にとって都合がよすぎる考えだ」

 

379: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 23:20:40.79 ID:rIGoNaRq0

「でもな、仮にだ。人の体をのっとる俺たちもまた、
実に自然に、体をのっとられているんだとしたら?
俺たちは自分で考えて人を殺しているように感じているが、
実際のところ、操られているだけだったとしたら?」

そこまで言って、僕は限界を悟ります
これ以上喋ることは出来なさそうです

足が止まる様子はありませんでした

 

380: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 23:26:37.42 ID:rIGoNaRq0

辺りは薄暗くなってきていました
道路には、浴衣を着た小さな子供や
自転車を漕ぐ小学生の男の子たちや
ちょっとお洒落をした中学生のカップルなど
街の祭に向かう人がちらほら見られます

八歳と六歳くらいの兄妹が
互いに虫よけスプレーをかけあって
その匂いが僕のところに流れてきます

少し遠くから笛の音が聞こえてきます
焦げたソースの香りもしてきました

名前を呼ばれた気がしました

 

381: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 23:36:58.46 ID:rIGoNaRq0

僕の目は動きませんでしたが
視界の隅にブルーのスカートが見えました

「あの後、すぐ仕事が終わったんだよ。
それで、歩いてたら、君の姿を見つけて」
その声で、僕は相手が誰だか知ります

「ねえ」と先輩は言います、
「さっきのって、やっぱり独り言だよね?」

僕は無言で先輩の顔を見つめます
先輩は僕の口元を見て、目を丸くして、
「血、出てる」と口を指差して言います





 

383: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 23:42:50.71 ID:rIGoNaRq0

僕が何も言おうとしないのを
動揺の証と受け取ったらしい先輩は
なぜか「大丈夫だよ!」と励ましてきます

「私の友達にも、君みたいな子、いたよ。
でもそれはただの一時的な病気で、
別に特別気に病むことじゃないんだよ」

よく分かりませんが、ひとまず、
ある点において手間が省けました

僕は先輩の体をのっとり、言うことを聞かない
自分の体を地面に叩きつけます

柔道で言うところの大内刈を、
先輩の体を使って僕にかけたわけです

 

384: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 23:50:15.48 ID:rIGoNaRq0

単純な脇固めを極め、僕の動きを奪います
そのまま先輩に喋ってもらうことにします
僕の体は先輩を振り払おうとしますが
その動きは僕自身が抵抗して軽減します

「あんただって、いつかは俺たちみたいに、
どうしても殺したくない相手に出会う。
そして次の瞬間にはあんたが命を狙われるんだ。
そういう繰り返しは、もうやめにしないか?」

そう言った後、続ける言葉を考えて、
しばらくその体勢のままでいると、
いつのまにか僕の体の操作は解けていました

ここまですることはなかったのかもしれません
地面に転んだ時にぶつけた肩が痛み出します

 

385: 名も無き被検体774号+ 2012/07/31(火) 23:57:02.42 ID:rIGoNaRq0

僕は先輩の操作を解除しますが
先輩はじっと目を瞑ったまま、動こうとしません

何かいって離れてもらおうとしましたが
口がまったく言うことをききません
この分だと食事にまで支障をきたしそうです

もう一度先輩の体をのっとり、僕を解放します

「こんなことするつもりはなかったんだよ」
先輩は青ざめた顔で言います、
「それに、自分でも意味の分からないこと
口走っちゃったり、私、どうしたのかなあ……」

「夏ですし」と僕は言います、「そういうこともありますよ」

 

391: 1 2012/08/01(水) 00:34:11.99 ID:o8xWRF6G0
>>385の最後の一行はすごい勢いで忘れてくれよな! 忘れてくれよな!

 

387: 名も無き被検体774号+ 2012/08/01(水) 00:02:42.29 ID:DgfHb8Lt0
いいじゃないか
ずっと楽しめるぜ

 

390: 名も無き被検体774号+ 2012/08/01(水) 00:33:47.12 ID:EblGn7Hv0
続きバチコイ!

 

473: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 21:07:42.00 ID:Axa50L7/0

「ねえ、怪我してない? 大丈夫?」
先輩がそう聞いてきます

口をきくことのできない僕は、頷いて
「大丈夫」という意志を示そうとしましたが、
先輩は僕が声を出せないのを
ショックのせいだと思い込んだようです
泣きそうな顔で謝り続けて来ます

少し気の毒に感じましたが
説明の仕様がないし面倒なので
僕は先輩の体を硬直させると
その場を逃げ出しました

 

476: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 21:16:15.55 ID:Axa50L7/0

祭に向かう人の流れに逆らって
重たい体を引きずって僕は家に帰りました

アパートに着き、自室の鍵を開け中に入ると、
服も脱がずにベッドに体を投げ出します

部屋は蒸し暑く、体は痛みます
扇風機をつける元気さえありません
ひどく喉が渇いていましたが
体を起こして水を汲みに行くのさえ億劫でした

いろいろと面倒だなあ、と僕は思います
「ここがくもりぞらさんの家ですか」と青空が言います





 

477: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 21:27:37.30 ID:Axa50L7/0

僕は起き上がって声のした台所の方を見ました
冷蔵庫の照明に照らされた青空の顔が目に入ります
青空はハイボールの缶を勝手に取りだして
プルタブを引いてごくごく飲んでいます

缶から口を離すと、青空は「おいしいー」と笑います
僕は安心して再びベッドに横になります

 

478: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 21:36:06.45 ID:Axa50L7/0

「お久しぶりです、くもりぞらさん――っていう台詞は、
本来もう少し前に言うべきだったんですが、
なんだか私に気付いてないみたいだったんで、
ここぞとばかりに尾行させてもらいました」

僕は何か言おうとしますが、上手く喋れません
青空はロング缶をひとつ空にすると、
「反撃開始ー!」と言って部屋に入ってきます
顔はうっすら赤く、酔っ払っている様子です

 

479: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 21:43:10.38 ID:Axa50L7/0

僕に動く気力がないのを知ってのことか
あるいは単に酔っ払っているからか
青空は人の部屋を漁りはじめます

煙草のカートンを見つけると、青空は
「お酒を捨てられた仕返しです」と言って
ゴミ袋に放り込みます

CDや本も、ほとんど捨てられます
青空なりの基準が存在しているらしく
青空はときどき「これはよし」と言って
一部のものは、棚に戻されます

 

480: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 21:46:06.97 ID:YAwDR5oI0
ワクワク

 

481: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 21:50:16.00 ID:Axa50L7/0

僕は青空に手招きして、身振り手振りで
コップに水を汲んでくるよう頼みました

青空は台所でコップに冷たい水を注ぐと
「ほーら水ですよー」と言いながらやってきて
ベッドに寝る僕の顔に1mくらい上から垂らします

僕は口を開けてどうにか水を飲みます
顔もベッドもびしょ濡れになりますが
少しでも水を飲めたことを僕は喜びます

 

482: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 22:00:45.39 ID:Axa50L7/0

「くもりぞらさん、今日は一段と元気ないですね」
ベッドに腰掛けた青空は、空き缶で僕の頭を
こつこつ叩きながら言います、「でも私は元気です」

僕は「後で見てろよ」という目線を送ります

「出て行ってもらいたそうな顔してますね」
青空は楽しそうに言います
「だから出て行ってあげません。あはは。
――それにしても、くもりぞらさん、
さっきから喋りませんね。動きませんし。
疲れてるんですか? なんかありました?」

僕が何も答えないのを見て、
「ん、まあいいや」と青空は言います
「とにかく、千載一遇のチャンスですね」

 

484: 名も無き被検体774号+ 2012/08/04(土) 22:11:02.28 ID:Axa50L7/0

青空は僕の体を無理やり起こすと、
後ろに回って僕の首に右腕を巻き付けました

「前のやつの仕返しです」と青空は言います

以前触れたときの青空の首は冷たかったのですが
今日の青空の腕はあったかいです
あるいは僕の体が冷えているのかもしれません

「私、酔っ払いですから」、青空は僕の耳元で言います
「酔っ払いですから、これから変なこと言いますけど、
それは酔っ払いだからです。気にしないでください」

> 前のページへ  > 続きを読む 

-名作

Copyright© 暇つぶしのゆいたんねる , 2025 AllRights Reserved Powered by AFFINGER4.