一つの村が消えた話をする
投稿日:2017年2月25日 更新日:
Aは精神的に疲れている時とかに、「何かね」と会話を始めるからだ。
俺「引き返すか?」
B「だが、障芽池を確認しない事には道に迷うだけだぜ」
俺「それもそうか、行けそうかA?」
A「少しなら大丈夫、行こ?」
俺「分かった、何かあったら遠慮なく言いなよ」
B「少し歩く速度を速めるか?」
俺「どうするA?」
A「今のままで良いよ」
俺「分かった」
この時、俺は本能的に良くない感覚を捉えて始めていた。
これが第六感というのかどうかは分からないが。
暫く歩いた時、
B「お?」
俺「どうした?」
A「・・・・・・」
Bが何か気付いたようだ。
B「この先に小屋があるぜ、あそこで少し休んでいかないか?」
俺「小屋?」
確かに獣道の先には小屋があった。
A「そこで休も?」
俺「ああ」
Aの身が万全で無い以上、そこで休む事にした。
俺は何故か、そこに小屋がある事に違和感を感じなかった。
俺「随分と古い小屋だな」
小屋は草や木で覆われ、空を見上げても一面を覆われており、月明かりが差し込んでいなかった。
B「中に入ろうぜ、Aも俺達も休憩しよう」
俺「ああ」
Bは一人で小屋の出入り口に向かって行き、扉を開けた。
小屋の扉は鍵がかかっていなかった。
A「・・・・・・・・・・」
Aはずっと黙ってしまっている。
中に入ると、Bはそそくさと椅子を探しだし、そこにAを座らせた。
小屋の中は、椅子や机、包丁のような物等、色々な物が転がっており、何かの異臭も感じられた。
Aは椅子に座り、Bは小屋の周囲を物色している。
俺は小屋の中を調べる事にした。
物が散乱している場所から、角を曲がり奥へ行った所に扉があった。
俺「なんだこの扉」
俺は扉を開けようとした。
その時、中から
「・・・・ポーン・・・・・・・・ポーン」
と言うような物音が聞こえてきた。
俺は一瞬だけ手を止めたが、好奇心が勝り扉を開けてしまった。
扉の中は和式便所で、変な異臭はここから出ている事が分かった。
和式便所の窓は割れており、外の森が見える。
なんだと思い、便所を出ようとした時、
「ああ・・・・ああああああ・・・ああああああ」
と言った声が後ろから聞こえた。
俺「!?」
その声は捻り出した様な声で、声だけでこちらを見ている気配がした。
俺「・・・・・・・・」
俺は立ち止まってしまった。
後ろを振り向こうにも、恐怖心が勝り、硬直してしまった。
「あああ・・・・あああああああああ・・・・」
声が聞こえてくる、ゆっくり近づいてくる感じがした。
その時、
B「おい!、何やってる!」
と、Bが小屋に戻ってきた。
同時に後ろの声は消えた。
その瞬間に俺はBに引かれ、Bは思いっ切り扉を閉めた。
俺「・・・・・・・・・・・・」
B「おい!、大丈夫か!」
俺「ああ、Bか」
B「ったく、Aもお前も大丈夫かよ!、Aは奥の椅子で寝ちまってるし、お前は扉の前で失禁しながら立ち尽くしちまってるし!」
俺は失禁していた。
恐怖の余り、自分でも気付いていなかったのだ。
俺は今体験したことをBに話した。
B「それが何かは分からないが、とにかくこの小屋から出る方がよさそうだな」
俺「だな」
B「Aも連れて出るか」
俺達は物が散乱している部屋に戻った。
俺「おい、Aは?」
B「あ?、あれ、そこの椅子にいた筈なのに」
いつの間にかAが椅子からいなくなっていた。
と、部屋の角の所から足音がした。
俺「おいA!」
部屋の角の所に行くと、壁と同化した扉があった。
B「なんだその扉」
扉を開けると、階段があった。
二階へと続く階段だ。
俺は正直、この小屋に二階があった事に気付いていなかった。
外から見ても二階と思われる所は全て、木や草で覆われていたからだ。
俺「二階にAは行ったのか?」
B「そうだろ、小屋の入り口の扉も閉まってるし」
俺とBは二階の階段をゆっくりと歩いた。
速く歩けば抜け落ちそうな程、階段の木は腐っており、朽ちている。
そして二階の部屋の扉を開けようとした時、
B「おい俺!、待て」
俺「何だ?」
B「扉を良く見ろ」
扉は数百枚と言える数のお札で閉じられており、
扉の両端には盛り塩があった。
だが、その盛り塩は黒く、変色していた。
B「扉の雰囲気からして、ここはやばいと思う。
だが、その扉と壁の所のお札が破られているから、Aはこの中にいる」
俺「行くしかないだろ」
B「俺が開ける」
Bはそう言うと、思いっ切り扉を蹴飛ばした。
その瞬間、Bは何かの強い力で吹き飛ばされ、階段の一番下へ落ちた。
俺「おいB!」
B「俺!!!、部屋の中を見ろ!!!!」
俺は部屋の中を見た。
中にはAが立っていたが、様子がおかしい。
こちらの方を見て、Aは両手を真横に上げている。
俺「A!!!!」
と言い、駆け寄ろうとした瞬間、
人の形をした黒い影の様な「何か」がAの後ろから現れ、赤く濁った眼で俺を睨み、追いかけてきたのだ。
俺「!?」
俺は咄嗟に扉を閉め、黒く濁った塩を掴み、
階段を駆け下りた。
下に落ちたBは、落ちていた包丁を手にし、身構えていた。
俺「B!!逃げろ」
B「Aがいるんだぞ!!」
俺「!!」
その時、和式便所のある方向からも黒い何かが近づいてきた。
B「クソッ!!!」
Bは包丁を持ったまま、俺と小屋を出た。