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人を自殺させるだけの簡単なお仕事です

投稿日:2017年3月12日 更新日:


 

83: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 04:31:55.55 ID:cC0GceiJ0
みてるぞ

 

90: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 09:58:09.71 ID:dXNG+K4x0

「八人、自殺させました。標的は十九歳から七十二歳まで。
男が六人、女が二人。四人は飛び降りで処理しました。
ロープが三人で、あとの一人はカミソリです」

「あなたもそうだと思うんですが、ある日突然、
人の体をのっとれるようになって、同時に、
自分が何をしなければならないのかが分かりました」

「最初の一人の他は、上手いことやれたと思います。
この仕事の良いところは、一人自殺させるたびに、
自分も死んで、生まれ変わったような気分になれることでした」





 

91: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 10:12:55.58 ID:dXNG+K4x0

「あなたは、どうして自分がその能力を
持つようになったのか、分かりますか?」

僕は首をふりました

「これはあくまで私の予想に過ぎませんが、
あなたにバトンが受け継がれたのは、
おそらく、私が人を殺すのをやめたせいです。

九人目で、私はありがちなミスを犯しました。
同情してしまったんです、標的に対して」

 

92: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 10:27:32.93 ID:dXNG+K4x0

「とたんに私の能力は失われました。
その後で、私が逃した標的は、自殺しました
たぶん、私の代わりに、後任が現れたんでしょうね。
私はもう使えないって判断されたんでしょう」

標的が顔を上げて聞いてきます
「あなたが初めて殺したのって、二十代の女性でしょう?
茶髪でセミロング、背は高め、指が綺麗な女の人」

僕が黙っているのを、標的は肯定と受け取ったようでした

 

93: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 10:43:22.27 ID:dXNG+K4x0

「あの人のこと、私、殺せなかったんですよ。
だって、あの人、笑っちゃいますよね、ああ見えて、
写真とお喋りするのが一番の娯楽なんですよ。

理由はわからないけど、そういうのって、
すごくげんなりさせられるじゃないですか」

「あの人を見逃してからしばらくして、
私は人の体をのっとる力を失いました。
更にしばらくして、今度は、体をのっとられたんです」

標的は僕を指差して言います、「あなたに」

 

95: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 12:13:23.67 ID:UA+CqfM50
続きが気になる

 

97: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 12:27:44.04 ID:3lKQNl8q0
小説苦手やけど読んでしまう

 

98: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 12:49:33.42 ID:GytETHSR0
ほしゅ

 

100: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 13:34:01.76 ID:nqS2gb950
これひょっとしてすごくね

 

102: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 14:54:38.16 ID:wLVz7Pdl0
支援

 

105: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 17:49:50.66 ID:UAFggopkO
ほしゆ

 

106: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 18:17:29.34 ID:IHlEujzvP

 

107: 名も無き被検体774号+ 2012/07/24(火) 19:22:57.19 ID:wLVz7Pdl0
ほしゅ

 

130: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 11:30:39.19 ID:IHHwwCvo0
どうなるんだ。
ほしゅ。

 

140: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 22:32:16.29 ID:5B7gcMQa0

「いわゆる”用済み”ってやつなんでしょうね。
前任者は後任者に消されるシステムなんでしょう」

「私が自殺させた人の中にも、ひょっとすると、
以前は私と同じようなことをしていた人がいたのかもしれません」

「だから」、標的は笑って言います
「殺しちゃった方が、話は早いでしょう?
そうしないと、次はあなたも狙われますしね」





 

141: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 22:40:44.50 ID:9yrowVvI0
待ってました!

 

142: 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 2012/07/25(水) 22:43:33.72 ID:pq7+81xP0
待ってた~はよはよ

 

143: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 22:45:21.94 ID:73C1LIo/O
おかえり!
続き気になる

 

145: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 22:51:18.84 ID:5B7gcMQa0
おお、なんかありがとう

 

146: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 22:54:35.86 ID:5B7gcMQa0

答える代わりに、僕はまたこの質問を口にしました
「結局お前は、殺されたがってるのか?」

「そうするのが、一番なんだと思います」

「”お前”が、殺されたがってるのか?」

「私、ですか。……そうですね、死ぬのは怖いです、
でもそれ以上に、死んだ方が楽だろうなあと思ってます。
うん、そうですね。たぶん私は殺されたいんです」

 

148: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 23:09:57.92 ID:5B7gcMQa0

「なら話は早い」と僕は言います、
「楽になる手伝いなんてごめんだね。
俺は、お前には、『今死ぬわけにはいかない』
って悔しがりながら死んで欲しいんだ」

標的は無表情に僕を見つめます
「その前にあなたが死ぬと思いますよ」

「いいさ。死んだ方が楽だろうと思うしな」

「……まねしないでください」

「アグラオネマは直射日光に弱い」

「はい?」首を傾げつつ、標的は植木鉢に目をやります

 

150: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 23:19:11.23 ID:5B7gcMQa0

「しかし、明るい場所で育てる必要はある。
変な表現だが、『明るい日陰』におくといい」

「……あの、私、もうすぐ死ぬんですよ?
あなたが殺さなくても、別の誰かが殺しますし」

「高温多湿を好むから、暖かい場所に置いて、
一日一回は霧吹きで葉に水をかけてやれ。
水も、やりすぎない程度にたっぷりな」

「育てませんってば」

「ついでに言うと、高価な植物だ。
あの手のウイスキーが十本くらい買える」

「ええっ」標的の体がこわばります
頭の中は酒瓶でいっぱいなのでしょう

 

152: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 23:29:49.73 ID:5B7gcMQa0

「枯らしてしまったときは、お前の体を乗っ取って、
クラスメイトに『友達になってください』って言って回る」

「そういうのはほんとにやめてください。
アグラ……ムドゥ……なんでしたっけ?」

「カーティシーでいい。覚えろ」

「かーてぃしー」

「そうだ」

「あおぞらです」

「……ん?」僕は星空を見上げます

「私の名前です。覚えてください」

「ああ、名前か。知ってるよ」

「くもりぞらではないです」

「青空だろ。確かに似合わない名前だよ」





 

153: 名も無き被検体774号+ 2012/07/25(水) 23:46:05.16 ID:5B7gcMQa0

「それで、あなたの名前は?」

「くもりぞらだ」と僕は言います

「まねしないでくださいってば」

「本当だよ。すばらしい偶然だな」

「ふうん。似合う名前で良かったですね」
青空は拗ねたような顔をして言います
「……それで、私はこれ、カーティシーを、
このまま持って帰るんですか?」

「そりゃあそうだ」

「恥ずかしいなあ」

「恥ずかしい思いは、これから沢山してもらう」

「今日のだけで死にそうなんですけどね」

「人はそう簡単には死なない」

「あなたが言うと説得力がありますね」

 

185: 名も無き被検体774号+ 2012/07/27(金) 00:07:31.37 ID:H0TWczxL0

「さて、そろそろ解散といくか」
青空の顔を見つめながら、僕は言います
「なんだかお前、いきいきしてきたからな」

青空は痛いところをつかれて
慌てて緩んでいた表情を引き締め
「別に、そんな」と言いながら顔を赤くします

”実は人と話すのが好き”などと思われるのは
青空のような者にとっては最も苦痛なことなのです

 

189: 名も無き被検体774号+ 2012/07/27(金) 00:29:14.69 ID:H0TWczxL0

「さようなら、くもりぞらさん」
青空は公園を出て行きました
逃げるように早足で出て行ったので
公園の前にいた人に気づきませんでした

青空のクラスメイトの男は
公園から出てきた青空を見たあと
その手に抱えられた植木鉢を見て
見てはいけないものを見たように目を逸らしました

すかさず僕は青空の体をのっとります
感じの良い笑顔で「こんばんは」と言います
相手の男は、とても困った顔をしましたが
「ちわっす」と頭を軽く下げました

 

190: 名も無き被検体774号+ 2012/07/27(金) 00:43:27.62 ID:H0TWczxL0

クラスメイトの男が去って行くと
青空は僕のところまで戻ってきて言います
「いったい、なにがしたいんですか?」
よほど恥ずかしかったのか、涙目になっています

「お前がしたくないことをお前にをさせたい。
お前がしたいことはお前にさせたくない」

「変な人と思われたじゃないですか、
公園から植物盗んだ人みたいじゃないですか」

「いいじゃないか、どうせ死ぬんだろ?」

「確かにそうですけど、それでも、死ぬ直前まで、
死んだ後の自分を想像する自分はいるんですよ」

「いいことを言う、その通りだ。だからやりがいがある」

呆れたような顔で青空が僕に言います
「女子高生に嫌がらせして楽しいですか?」

「楽しいぜ。今度やってみな

 

204: 名も無き被検体774号+ 2012/07/27(金) 13:05:48.39 ID:H0TWczxL0

それからも毎日、僕は青空が知人と出会うたびに
礼儀正しく挨拶させ、時には会話までさせました

周りが少しずつ、青空が口を開いても
違和感を覚えなくなってきたところで、
惜しくも課外授業が終わってしまいます

最期の授業が終わった後、
青空はまっさきに教室を出ると思いきや、
ノートの隅に、おそらく僕に向けた
メッセージを書きはじめました





 

205: 名も無き被検体774号+ 2012/07/27(金) 13:14:34.69 ID:H0TWczxL0

青空は、以前僕がそうしていたように、
ブランコに腰掛けて待っていました

「こんばんは、くもりぞらさん」

真夏日の昼間で、ブランコの椅子は
ひどく熱を持っていました

カーティシーの育て方について、
今のやり方で合っているのか確認したい、
というのが青空の要望でした

話を聞く限り、青空の育て方に
特に間違った点はなさそうでした

 

207: 名も無き被検体774号+ 2012/07/27(金) 13:19:49.56 ID:H0TWczxL0
「こんばんは」じゃなくて「こんにちは」だね
俺あたまおかしい

 

208: 名も無き被検体774号+ 2012/07/27(金) 13:21:41.16 ID:H0TWczxL0

「糞暑いな」と僕は汗を拭います

「落としてあげましょうか、川とかに。涼しげですし」

僕は無視してシーブリーズを体に塗ります

「いつか落としてやりますからね」
青空は僕に小石を定期的に投げてきます

僕は青空の体をのっとり、水飲み場で
おでこで水を飲ませてやります

制服までびしょ濡れになった青空は、
「涼しげでいいです」とブランコに座って言います

 

209: 名も無き被検体774号+ 2012/07/27(金) 13:34:42.99 ID:H0TWczxL0

「お前はもう夏休みか。残念だな」と僕は言います
「もっと色々やらせようと思ってたんだが」

「夏休み大好きです」と青空はばんざいします
「人と会わなくて済むし、家にいられるし。
お酒は誰かが捨てたから飲めませんが」

「人と会うのも、外に出るのも嫌なのか」
僕がそう聞くと、青空は「しまった」という顔をして、
「ええと……どちらかと言えば」と濁します

青空の体をのっとり、僕はポケットをまさぐります

ところが目当てのものは見つかりません
しかたなく、操作をいったん解除します

 

210: 名も無き被検体774号+ 2012/07/27(金) 13:43:03.33 ID:H0TWczxL0

「お前」僕は聞きます、「携帯はどうした?」

「携帯? 持ってませんよ、そんなもの」

「携帯電話を持ってない? 今時の女子高生が?」

「必要ないことくらい見ればわかるでしょう。
いままで気付かなかったんですか?」
前髪をしぼりながら青空は言います

確かに、青空が携帯電話を持っても、
目覚し時計と化すのが目に見えています

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